モデルは壁にくっつける

モデルは壁にくっつける

壁の使い方

2022/10/19

ポトレ撮影に必ず出てくる背景の問題。中でも、背景の壁がどんな壁か気になるところだ。
私は常に、後ろを空間にするカメラマンなので、中途半端な壁ありの作品を探すのに苦労した。結局、ヌードでしかなくて、着衣の作品では、例えばこれがこんな壁だったらダメ、という事例にした。一枚は良い例だ。

ただのコンクリートの壁。こんな場所で良いポトレを撮るには、モデルさんを壁にくっつけて、それなりにポーズを付ける。例えばこの作品で、モデルさんが、壁から離れてしゃがんでいたらどうだろうか。コンクリートの壁は背景として役にたたない。いくら開放してもただの灰色のポケにしかならないでしょ。違いますか。
壁から中途半端に離れた写真が見つからなかったから、次の写真は自動販売機がただの灰色の壁だったらどうか。

色気がなければ、なんでもない駄作になる。色気があってもどうかなって思っている。
後ろの自動販売機がキラキラしている夜で、もし、昼間だったらやはり、見せられる写真ではない。もし、自動販売機がただの灰色や黒っぽい壁だったら、どうしたらいいのか。その前の駅の写真のように、彼女が座るこのベンチにこだわらず、壁にくっついてもらい、そこでなんらかのポーズをとってもらうのがベターだ。
つまり、◆モデルは壁から中途半端に離れて、その壁を背景にしてはいけない
ということである。例外は、壁が特別に美しいか情緒がある時だけだ。

想像してほしい。彼女の背後の金網と列車が、ただの壁や塀だったら。花ももちろんない。それでは足フェチご用達の写真になる。彼女の後ろに花があり、その後ろを列車が走っている。彼女の背景は圧迫感があるが、絵になっている。
この写真は私の大好きな一枚だが、列車がきたのを見て、駅員に許可を取り、咄嗟に撮った。彼女がプロだから上手く撮れたが、場所を指定したのは私である。私の嫌いな過剰なポーズもとらない良いモデルさんだった。余談だが、この写真のRAW原画を破損してしまった。泣ける。

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